酒言(Sake-Say)...Sak'e'ssay

忘れられないお店~その1~

私の日本酒観に最初の衝撃を与えたのは、上司とともに、アメリカ人の弁護士に連れて行かれた、銀座の〇〇花というお店でした。

こちら、場所は移転してまだ健在ですが、ここに連れて行ってくださっていた先生は、数年前に鬼籍に入られてしまいました。

特許弁護士だったこの先生は、元軍人さんで、大柄でいかにも軍人っぽい、分厚い体型の、弁護士にしては珍しい、ちょっと武骨(粗野)な感じのする方でした。

もう当時でも60に手が届こうかというお年だったでしょうか。
流暢な日本語を話され、ときにビックリするような単語をご存知でした。(「雲助」とか)既に白髪まじりでしたが、元は見事な金髪で、奥まった瞳がはっとするような蒼色だったのを思い出します。

若い頃駐留軍として数年間日本に滞在されていたらしく、その当時、かなり楽しい時間を過ごされたようでした。
東京は勿論、日本各地の夜の街に関する知識は相当なもので、日本酒、ワインの造詣の深さも並大抵のものではなく、外国人でありながら、私の上司のお酒の師匠でもあったようです。

その銀座のお店は、京都の先斗町の、彼の馴染みの日本酒のお店から、紹介されて、来日する度に通うようになったということで、まさに日本酒通のための、日本各地から大将がご自分の舌で拘って選び抜いた美酒を、シンプルだけど美味しいお食事とともに提供してくれる、本当に、「通人」向けの、お店でした。

今でこそ「お料理とペアリング」なんてワインでもよく見かけるようになりましたが、こちらのお店は、その当時から、「お任せ」にすると、お料理に併せて大将がおススメのお酒を次から次へとコース仕立てで出してくれる、本当に先進的なお店でした。

あれから20年近く経ちますが、私はいまだにここ以上にこだわりの深い、めずらしい日本酒を提供してくれるところを知りません。
私のいくつかの「忘れられないお酒」を飲んだのもここですし、(「世界の花」「七冠馬」「波瀬正吉」も...。)
今後も、すごく日本酒が好きな、大切な人をもてなすのに、自分でも使うようになりたいと思う、特別なお店の一つです。

とは言え、場所も銀座ですし、意外と庶民的な雰囲気のお店ながら小さなグラス一杯の日本酒(勿論とても貴重なものですが)が、一杯2000円とかしてしまうので、教えてもらった当初は、畏れ多くて自腹で行くなんて想像もできませんでしたし、この年になってもまだまだ、気軽に行けるお店ではありません。

でも、大将がご健在のうちに、また行きたいなぁ...。

そういえば、こちらの大将は、「利き酒師の資格」を立ち上げる際に立上げメンバーには入っていたのだけれど、協会に入ってしまうと、自分の好きなお酒を自由に店に置けなくなるからといって、協会には入られなかったと聞いたような。

本当に、独自のアンテナで、好きなお酒を提供されている素晴らしいお店です。

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